花聖


花の記憶が詰まった帽子を拾った少年は、


そこらじゅうに花の芽を吹かせてあるいた。


ひとびとは少年を花聖と呼んだ。





花の記憶が詰まった帽子はゆっくりゆっくりと、


少年から色と記憶を吸いだしていった。


少年は次第に景色の中へ薄まっていった。




少年が消えたとき、花の記憶が詰まった帽子も新たな宿主を探しに消えた。


ひとびとはその恐ろしい帽子を花聖と呼んだ。



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